[33]智龍(ともドラゴン)
ある日の夕方… 一人の守護天使がご主人様との夕飯の為の買い物に来ています。 守護天使の名はウマのジュン。今は「誠」という、本当のご主人様のお世話をしています。 「今日の晩ご飯は誠さんの大好きな麻婆豆腐♪」 誠は、「ご主人様」と呼ばれるのは照れくさいので、ジュンには「誠さん」と呼ばせています。 「あ、そうだ、誠さんのアルバイト先に行ってみよう。ひょっとしたら誠さんと一緒に帰れるかもしれないしね。」 そう言ってジュンは、誠の勤め先に行きます。
「ん?どうしたんだろ?」 その途中でジュンは、歩道橋の下で困った顔をしているお婆さんを見つけました。
「お婆さん、どうしたの?」 「いやね、荷物が重くて、歩道橋を渡る前に疲れてしまってねぇ…、少し休んでる所なんじゃよ。」 見るとそのお婆さんは、たいして重い荷物…と言うわけではありませんでしたが、スーパーの袋には肉やら野菜やらが色々入っていました。 「お婆さん、これから歩道橋渡るの?」 「ええ、横断歩道まで行くのは遠いからねぇ。」 「お家は近くなの?」 「横断歩道のすぐそばだけど、それがどうかしたのかい?」 その言葉を聞いて、ジュンはしゃがんでお婆さんに背を向けました。 「お婆さん、あたしにおぶさって。あたしがお婆さんのお家まで送っていってあげるよ。」 「そ、そんなのいいよ。お嬢ちゃんに迷惑だろう?」 「あたしから言ってるんだから、迷惑だなんて思わないでよ。ほら、早く。」 「そうかい、じゃあお嬢ちゃんにお世話になろうかね?」 そう言ってお婆さんはジュンの背中に乗ります。 「ばっちしまかせてよ!お婆さん、しっかりつかまっててね。」 ジュンはお婆さんを背に乗せ、お婆さんと自分の荷物を手に持って歩道橋を上り始めました。
力持ちのジュンにとって、体重50kgにも満たないようなお婆さんは軽く感じるようで、歩道橋の階段をヒョイヒョイ上っていきます。 「お嬢ちゃんすごいねぇ。」 自分の数倍速く上るジュンに、お婆さんが驚いたように言います。 「お婆さんが軽いからだよ。」 ジュンは笑顔で答えます。 「年をとると、皆こうなるんだよ。お嬢ちゃんも買い物の帰りのようだけど、料理はお嬢ちゃんがするのかい?」 「うん、あたし誠さんの為に、お料理もお掃除も、一生懸命練習したんだよ。」 「そうかい、お嬢ちゃんは言いお嫁さんになれるねぇ。」 お婆さんが微笑んで言うと、ジュンは顔を赤くしてます。 「お、お嫁さんだなんて…あ、あたし・・・」 「おやおや、可愛いねぇ。」 お婆さんが笑いながら言います。
しばらくして、歩道橋の反対側に着きました。 「お婆さんのお家どこ?」 「そこの赤い屋根の家だよ。」 「赤い屋根の家って…このお家?」 ジュンが驚いたようにおばあさんに聞きます。 「ああ、そうだよ。どうもありがとう、お嬢ちゃん。」 ジュンが驚いたのもそのはず、お婆さんの家は4階建てで、ジュンと誠の住んでいるアパートよりも、数倍大きな家だったのです。 (おっきいお家・・・) ジュンはすごく驚いたようにお婆さんを下ろします。 「そうだ。お礼にお嬢ちゃんにお茶でも出そうかねぇ。」 「あ、いいよ、そんなの。じゃ、じゃあね、お婆さん!」 ジュンは逃げるように去っていきました。
「あ〜、びっくりした。あのお婆さんすごくお金持ちだったんだ…。」 ジュンはよほど驚いたせいか、心臓がドキドキしています。 「よ〜し、気を取り直して、誠さんの所に行こうっと。」 ジュンは元気よく歩き出しました。
しばらくして、誠の勤め先の会社に着き、社員らしき人が何人か出てきました。 (誠さん、いるかな?) しばらくジュンが待っていると、出入り口から誠が出てきました。 「誠さ〜ん!」 その言葉に誠が振り向きます。 「あ、ジュン。」 「お帰りなさい、誠さん。」 ジュンが嬉しそうに言います。 「うん、ただいま…って言うのはなん変な気もするけど…。」 「それもそうだね。」 二人は笑いながら言います。
「誠さん、今日のご飯は麻婆豆腐だよ。」 「そっか、楽しみにしてるよ。」 「うん、ばっちしまかせてよ!!」
終わり
今回はジュンのご主人様(作者)のワンダバ・ダン様のご協力を頂きました。ありがとうございました。
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2003年02月08日 (土) 23時30分
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